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2026.08.13

THESPA TIMES Vol.12 米原秀亮インタビュー「本気で優勝、昇格を目指すならまだまだ“ぬるい”。けがを治してザスパのために戦いたい」

移籍加入した2025年にキャプテンを任され、新シーズンも腕章を託された。しかしけがに泣いたこの1年半同様、プレシーズンで肩を負傷。鹿児島での開幕戦に、その姿はなかった。

黒星スタートとなったなか、チームを引っ張る立場として忸怩たる想いだ。それでもピッチの外でも、できることはあると、ザスパのために行動するのが米原秀亮だ。“ぬるい”という厳しい言葉を投げかけるのも勝利のため。リーダーの覚悟に迫る。


誰よりも悔しさを抱えている男と言えるのだろう。

2025年にロアッソ熊本、松本山雅FC、ヴァンフォーレ甲府に次ぐ、自身4つ目のチームとしてザスパに加入。技術力に秀でたボランチは、就任したばかりだった沖田優監督のチームにおいて、魅惑的な攻撃サッカーとの相性も良く、移籍1年目からキャプテンの大役を担った。

しかし……。突きつけられたのは予想外のけがとの戦いであった。

ザスパ1年目の昨季は、プロ生活約10年、いやそれ以前より酷使し続けた左足首がついに悲鳴を上げ、我慢しながらトレーニングを続けたが、あまりの痛みに8月にメスを入れる決断を下した(左足関節骨棘切除・靭帯修復術)。

それでもひとつの目標としていた最終節の古巣・松本戦には間に合い、翌年に期待を持たせる実戦復帰を果たした。来季こそは――。再び腕章を託され、強い想いで臨んだ2026年、半年間の百年構想リーグへ気合いを漲らせていた。しかし、足首を手術した影響で身体のバランスが崩れ、調子を取り戻すまでに思いのほか時間が経過。気持ちは前に急いているのに、身体が思うように付いてきてくれない。もどかしい日々だった。

「(百年構想リーグの自己評価は)全くダメ。足首に違和感を持ちながらやっていて、ちょっと痛みがぶり返して、また2、3週休んで、復帰しての繰り返しでした。手術をして足首の可動域が広がった分、身体が反応してしまった面もあったと思います。最後の数試合は足首の状態も良く、再び出ることができましたが、体力を戻し切るまでには至らなかった印象です。以前は足首を捻って腫れていても無理にでもやっていたのに、ここまでの長期欠場は初だと思います……」

唇を噛む米原がそこにはいた。それでも夏からの新シーズンに向け、「やるつもりだった。そのつもりで始動日にも臨んでいた」とキャプテン続投へ改めて強い責任感を示し、監督からも「頼めるか?」と打診を受けた。この1年半、けがで苦しんでいたにも関わらず、“オキさん”から寄せてもらった信頼の証だ。粋に感じずにはいられなかった。

だが、今度はトレーニング中に「手を地面に突いた後に上から身体に乗られてしまった」と不慮の事故で、肩を負傷(右肩関節脱臼)。開幕戦出場は絶望となった。

この1年半、離脱期間が長く「ピッチに立っていない自分がチームやチームメイトに何か言って良いのか」と悩む時期もあった。だが、すべてはザスパが勝つため、J2復帰を果たすため、感じたことは伝えるべきと、耳の痛いことでも周囲に語りかけるようになった。だからこそ、新シーズン開幕に向けても厳しい言葉が口を突く。

「本気で優勝して、J2へ戻るんだったら、まだまだ“ぬるい”ことばかりだと感じます。この間の天皇杯予選(tonan前橋に2-0で勝利)や練習試合もそうです。しっかりと積み上げてきましたが、厳しい言い方をすると、外から見ていてもこのままじゃ昇格争いじゃなくて、残留争いに巻き込まれるかもしれないと思うくらいの“ぬるさ”が残っていた。そこはやっぱり、伝えるのも大事ですが、僕や副キャプテンらを含め、みんながプレーで表現するしかないと感じます。

プレーや選手間のコミュニケーションなど、やることはいっぱいありますが、J2に戻るために、まず僕はけがを治して、ザスパのために戦いたいです」

これまでのキャリアではリーダーとしての経験は限られ、普段は笑顔が似合う柔和な雰囲気で、若手たちとも楽しい時間を過ごすイメージがある。

だが、ピッチに立てばプロとして生き死にがかかってくる。実際に米原は3度の降格や、あと一歩で昇格を逃す地獄のような経験もしてきた。だからこそ勝負の神は細部に宿ることを伝えられる立場にもある。

「僕はサッカー選手になって降格しか経験したことがないんですよ。そういうことを含めてサッカーって簡単じゃないってやっぱり実感していますし、松本のときもプレーオフで、最後の最後に失点して、上がれなかった経験もしています。1年は本当に長いようで短い。シーズンが始まれば試合はすぐ来るので、1週間、毎日、やるべきことをしっかりとやりながら過ごすことが大切です。

今のザスパには若い選手や、このクラブしか知らない選手も多い。一方で、勝ち癖のあるチームにいた選手は少ないです。そこは僕も含めてなので、僕が伝えられることはあまり多くはないかもしれませんが、いろんなチームを経験してきたからこそ、勝負どころや、今何をすべきかなどを伝えていきたいと考えています」

そして「自分が一番ギラつくことが大事」とも語る。だからこそ誰よりも熱を高め、主張し合い、お互いの意志を擦り合わせる大切さも意識する。

「やっぱりピッチに立っている選手しかゲームは作れないですし、その選手たちが同じ絵を描くことが大事です。そこは試合中どうこうより、練習でのコミュニケーションの量が関わってきます。そのコミュニケーションはチームとしてもっと取らないといけない。近くの選手同士でも『こうしてほしい』『ああしてほしい』という会話は増やしてもらいたいです。そこはまだチームとして足りていない。自分もいろんな選手とより話すようにしています。

自分の想いを素直に伝えることと、各選手がどう感じているかを知ること。その選手の考えていることを聞くことによって、自分が同じピッチに立ったときにやりやすいはずですし、チームメイトも同じだと思います。だから一方的に話すのではなく、気持ちを聞くようにしています。それは同じボランチだけでなく、すべてのポジションの選手とです。

例えばこの間の練習試合は、(中島)大嘉や小西(宏登)らと見ていましたが、『ボランチがこう持ったらこう動いてほしいみたい』な意見を伝えると、大嘉は『こういうときはこっちにランニングしたい』などと返してくれ、擦り合わせることができました。そういう意見の擦り合わせがいろんな場所に派生すれば良いですし、僕だけが行動しても仕方ないので、チームのみんなでやっていきたいです」

そして米原は何度も繰り返す。

「J2に上げるために何ができるか。自分の持っているものをすべて注ぎたい」

改めて厳しい言葉を投げかけるのはチームのためであり、勝つためであり、そのなかで、1年半、沖田監督の下でしっかり積み上げてきたものも活かしたい。

「この1年半、オキさんのサッカーをやってきて、積み上げ、成果は見えています。もちろんすべて満足というわけにはいきませんが、良い試合は増えています。それを今シーズンどれだけ高められるか。誰が出ても同じようなサッカーをできるようになっていますし、落とし込み、共通理解は進み、ピッチで表現できるようになっています。

一方で、得点を取るまでの流れ、ビルドアップなどはある程度、作れるようになっただけに、簡単な失点をしないこと。自分たちのミス、セットプレーで崩れない。もちろん相手を褒めなくてはいけない失点もあります。そういうプレーは抜きにして、安い失点を減らしていければ、自ずと、優勝や昇格争いが見えてくるはずです」

米原の言葉どおり攻撃的な姿勢を貫くチームにおいて、スタイルを維持しながら、求められるのが失点の減少だ。指揮官も進むべき方向は決して曲げずに、守備面の要求も増やしている。

「当初、オキさんが話すことは攻撃のことばっかりで、攻撃面を落とし込んでくれましたが、最近はスタイルは変えずに守備面の指示のほうがもしかしたら多いかもしれません。やっぱり大事なのは失点を減らすこと。自分たちが先制してゲームを運べる試合の方が勝率が高いですし、早い時間帯で失点してしまうと、もちろん逆転する力はあると思いますが、逆転にはパワーが必要になる。だからこそ無失点を意識したい」

先の北中米ワールドカップでは優勝したスペインのサッカーに感銘も受けた。

「スペインはもともと好きで見ていましたが、今のザスパが目指すべきサッカーと言いますか、スペインはボールを保持し、『ボールを持っているから失点しないよね』というようなスタイルじゃないですか。それを世界トップの舞台でも体現しているのが、本当に凄くて、ボールを持ちながら失点のリスクを減らすことは自分たちも取り組んでおり、学ぶべきことが山ほどありました。スペインは失い方が良いと言いますか、悪い失い方がほぼないですよね。選手同士の距離が近いからこそ、あれだけ早く切り替えてボールを奪えますし、自分たちはそこがまだ足りない。簡単なミスからカウンターを食らうこともありますから。スペインはかなりの頻度でしっかりつなぎ、相手をアタッキングサードまで押し込めていますからね」

改めて開幕前の再びの戦線離脱は「相当に悔しい」。キャプテンとしてピッチに立てないのは忸怩たる想いだ。

それでも米原はザスパがJ2に戻るために、今何をすべきか、常に真剣に考え、行動に移している。ピッチに立てずとも関係ない、このチームのためにやれることをやるんだ。

彼の背中からはそんな想いが伝わってくる。

いよいよ迎えた勝負のシーズンの幕開けだ。その船出におらずとも、米原の献身は必ずチームのプラスになっているに違いない。

文:本田健介

カテゴリ:INTERVIEW