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2026.08.12

THESPA TIMES Vol.11 沖田優監督「みんなでJ2にいこう。結果がより問われる1年へ」

2025年に就任してから1年半。沖田優監督は一歩ずつチームのベースを築いてきた。

人々を魅了する攻撃的なサッカーを根付かせ、確かな土台を作ったからこそ、J2復帰へ。「シビアな結果が求められる」新シーズンへ守備の強度や組織力も強調。攻撃マインドの指針は決してブラさないが、攻守で戦える準備を進めてきた。

勝負の1年へ、プレシーズンの狙いや熱い想いを指揮官に語ってもらった。


真夏の太陽が降り注ぐピッチ。練習を終え、選手たちと同じように額から汗を流しながら沖田監督は呼びかけた。

「みんなでJ2にいこう。ザスパ群馬で一緒に上がろう。それを実現する1年が始まるんだ」

シーズン移行に伴う真夏の開幕は各クラブにとって初めてのことだらけだ。もっともザスパにとってはシーズンオフが来るたびに複雑な別れが訪れるのは恒例となっている。

今オフも、各々葛藤を抱えながら、攻撃の大黒柱になったMF西村恭史が大分トリニータ、成長著しいDF野瀬翔也が北海道コンサドーレ札幌、百年構想リーグでもチームを支えたMF菊地健太がFC今治に移籍し、それぞれがJ2クラブへの個人昇格を果たした。

ザスパで育った選手は多くが新天地で輝いている。それは群馬の地で積み重ねた経験が活きているに違いなく、うれしくも複雑な現実でもある。

だからこそ、指揮官は新シーズンが始まる直前に改めてチームに呼びかけたのだ。誰か個人ではなく、クラブとして今度こそみんなでJ2に戻ろうと。

沖田監督が就任して1年半、攻撃的で魅力的なサッカーは話題を呼び、進むべき方向性は明確になっている。一方で技術を大切にし、攻撃に振り切った尖ったスタイルはスペクタクルに富むが、リスクも伴う。現に2025年シーズン、先の半年間の百年構想リーグは失点がかさみ、思い通りに勝星を伸ばせなかった。

それでも就任から1年半、しっかりと一歩ずつ階段を登ってきている。

「この1年半でしっかりと積み上げてきたなかでの開幕なので、1年半前の、監督として初めて迎えた開幕のときとはやっぱり感覚も異なりますね。公式戦ではどうなるのかが読み切れない面もありました。そのときと比べれば、今は計算がつきますし、メンバーは数人変わりましたが、選手も1年半積み重ねてきた自信があるはずです。

就任1年目のときも監督という仕事はいつか終わりがくるものだと覚悟していましたが、選手の表現力とクラブの支えがあって、自分は1年半続けさせてもらえました。だからこそ、今シーズンはJ2復帰へ結果をより問われる1年になると自覚していますし、このクラブを目標に導くために勇気をもってやらなくちゃいけない。そこを乗り越えてこそ自分たちの目指す場所に辿り着けるはずです」

そのなかで、この夏のプレシーズンも計画的に強化を進められた。

「沖縄でキャンプを行なった分、群馬に戻ってきてからはよっぽどの暑さでなければ気にならないほどの耐性ができているとも感じます。夏の開幕は誰にとっても初めてなので、分からないことが多いですが、去年も夏場は強度が落ちがちだったため、それをいかに避けるかを考え、この1か月取り組んできました。その面では沖縄キャンプを含め良い強度で練習ができ、チーム作りは順調かなと思っています。開幕前の最後の練習試合がボロボロだったらマズかったですが、一番良い状態で臨むことができ、計画どおりに進めることができました。

キャンプではどれくらいの負荷をかけ、昼間の練習試合もどれくらいのプレータイムを設け、キャンプから戻ってきて2週間ほどでリーグ開幕を迎えるだけに、何がベストなのか自分の意見も伝えながら、コンディショニングコーチ(青木豊)、フィジカルコーチ(西村陽毅)とも話をしながら模索してきました。

それこそ、百年構想リーグの最終戦からオフ期間は2週間ちょっとに設定し、立ち上げ当初は3日練習してオフを入れるスケジュールを3回繰り返し、キャンプ2日目以降に練習試合を入れてもらうなど開幕から逆算してメニューを組み、良い過ごし方はできたと感じています。

メンバーはこの1年半で数人が入れ替わっており、ここまで1年半積み上げたグループ、百年構想リーグから加入して半年間やってくれたグループ、この1か月間で加わったグループの擦り合わせをしながら、強い相手と練習試合を組み、課題を明確にしてきました。時間がかかると感じた練習試合もありましたが、修正を繰り返し、みんなの頑張りもあってここまで準備することができました」

ただ、厳しい見方をするなら、J2復帰へ求められるのはその準備を活かしながら、シビアな結果を残すことだ。その点では、沖田監督のマネジメントにも変化は起こっている。

「百年構想リーグでも増やしましたが、攻撃は攻め方のバリエーションをより増やし、守備は今まで以上に強度も組織力も高まるように、基準を示してきました。それを開幕からいかに表現できるか。表現できる時間が長ければ長いほど、今までの負けを引き分けに、引き分けを勝ちにもって行けるはずです。

分かりやすく言えば、自分が就任して最初の半年は、まずはチームに攻撃のマインドを植え付けようと、守備の話やアプローチを一切しなかった面はありました。もしかしたら『監督は攻撃の話しかしない』と思われていたのかもしれません。でも、そこはザスパが攻撃のチームになるとイメージ付けするためには必要なことでした。

当時は『今はこれを信じてやってほしい』と話していましたが、徐々に『ここからフェーズが変わっていくよ』と目線も変化させてきました。フェーズの移行はこの1か月は特にですね」

比較対象にするのはまだ早いが、先の北中米ワールドカップには生きた教材も多く転がっていた。優勝したスペインは攻撃面がクローズアップされがちだが、ボールを失った直後の切り替えの速さと組織的な守備でも群を抜いていた。

「オフ期間でもあったので、家族のもとに帰らせてもらい、ワールドカップは子どもたちと一緒に観る機会もあり、楽しませてもらいました。ワールドカップの感想はやっぱりおもしろかったということですね。スペインが優勝したのは偶然ではないですし、攻撃で主導権を握り、守備に切り替わった瞬間にあれだけ強度を高く、組織的にボールを奪い返せる。自分たちの目指す方向としても、興味深い大会だったと感じます。

ただ、監督としてはワールドカップを楽しむだけでなく、ザスパを次のフェーズに進めるためのプレーを探し続け、それこそ指標になるようなシーンは日本代表の試合を含めてたくさん見つけることができました。そうした映像は選手たちに見せて還元し、自分たちのプレーを具現化するための材料にさせてもらっています。

そしてワールドカップで改めて感じたのは自分たちのスタイルを、対戦相手関係なく表現し続けられるチームはやはり強いということ。今大会で目にした世界トップクラスのチームは、対戦相手によってやり方を変えるのではなく、どことぶつかっても自分たちの強みを変えない、そういうチームは強いと実感しました。それこそフランスとスペインの準決勝もとんでもないゲームでした。特長がハッキリしているチーム同士の対戦でしたが、スペインは攻撃面で良さを出すことでフランスの良さが出なかった上に守備の質も高かった。ザスパの目指すべき方向性がそこにあったとも感じています」

そうした世界トップレベルのサッカーに刺激を受けながら迎えるシーズン開幕である。早速、今季の公式戦初戦となった8月1日の第31回群馬県サッカー協会長杯サッカー大会では、tonan前橋に2-0で勝利し、天皇杯の群馬県代表の座を手にした。リーグ開幕戦は、鹿児島ユナイテッドFCとアウェイで対戦し、0-1で競り負けたとはいえ、チャンスも作った。

「1試合で一喜一憂しない。正直、ピークは開幕戦ではないと思っています。試合を重ねるごとに良くなっていきたい。そういうスタートを迎えたいですね。課題を修正しながら、最低限、勝点1を取りにいくゲームもあるかもしれません。そこはJ3を勝ち抜くために必要なことも意識しながらバランスを考えてやっていきたいです」

暑熱対策もやれることをやってきた。

「コンディショニングコーチの下、夏場の栄養管理や水分管理も徹底し、上がり切った深部体温を落とすため、練習後にはアイスバスを用意するのは大変なので、クラブハウスの風呂を活用して、浅い温浴、冷浴、深い温浴、冷浴を設けて選手に入ってもらっています。練習中も手のひらや足の裏を冷やすと深部体温を早く落とせるので、選手には練習中に要所で手を水につけてもらったりもしています」

まさにJ2復帰へ準備は整えてきた。沖田ザスパの真価が問われる1年――開幕戦以降もどんな試合を見せてくれるか楽しみだ。

文:本田健介

カテゴリ:INTERVIEW