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2026.06.20

THESPA TIMES Vol.10 西村恭史「半年で得られた収穫。このクラブに呼んでもらえて本当に感謝」

まさに大黒柱。昨シーズンの後半戦、そして明治安田J2・J3百年構想リーグで見せた西村恭史のパフォーマンス、存在感はそう評せるだろう。

ケガを抱えていた主将の米原秀亮に代わり腕章を巻き、ボランチ、シャドー、FWなど複数のポジションをこなしながらゴールにも絡む。中軸となった男が振り返る半年の特別大会・百年構想リーグとは――。


選手にとって運命的な巡り合わせというものがあるのだろう。

監督との相性、自身が歩んできたキャリア、そのときの年齢、味方との関係性……さまざまな背景が影響するに違いないが、運命的なクラブと出会ったことで目を見張るような活躍を示し、はたまた一気にブレイクするケースも見られる。昨季加入した26歳の西村恭史にとってもザスパは運命的なクラブと言えるのだろう。

技術を大切にし、攻撃的なスタイルを貫き続ける沖田優監督の下で、「この歳でより成長できることに気づけた。このクラブに呼んでもらえて本当に感謝しています」と顔を綻ばせ、自身としては“新たな扉”となるリーダーとしての役割にも挑んできた。

「自分はこれまでキャプテンマークを巻いた経験はなかったので、全くイメージがなかったんです。でも、昨年、ヨネくん(米原秀亮)がケガをして、誰がキャプテンマークを巻くかとなったときに、成長するため、チームのため、そして年齢的にも、自分が巻く必要性を感じたんです。だからコーチには『巻きたいです』と伝えていました。そこから意識も変わっていきましたね」

グループ分けでJ2の湘南ベルマーレ、ベガルタ仙台、横浜FCらと同組のEAST-Aに入った百年構想リーグでも米原の想いを背負い、腕章を巻いてチームの先頭を走る西村の姿があった。

「(百年構想リーグは)イレギュラーなシーズンだったので、最初はやっぱりいろいろと難しさを感じながら、それでもJ2のクラブと戦える楽しさがありました。チームとしても、自分としても成長できた半年だったと思います。思うような結果は出せなかったですが(湘南、横浜FCを下すなど健闘しつつEAST-Aで10チーム中6位。順位ごとのプレーオフは2連敗)、チームとして得られたものはありました。

難しさで言えば、若い選手たちは、シーズンの早い時期に、ああいう連戦をあまり戦ったことがなかったと思うんです。ただベテランの選手や僕らがそのあたりの実体験を伝えながら、チームとして新しい経験値を上積みできたと思います。ケガ人もいましたが、ルーキーを含めてほとんどの選手がピッチに立てましたし、チームとしての選択肢、戦い方の幅を増やせたのも良かったです。

個人的にはそうした若い選手たちと一緒にプレーするなかで、より一層全体を見て、流れを把握しながら、どうプレーするべきか、ピッチ外ではどう行動すべきかを考えてきました。ただ、もっとやれたことがあったんじゃないかとの気持ちは強いですし、その悔しさは自分自身、今後に活かしていきたいですね。

それこそアドバイスひとつにしてもやり方はさまざまですし、負けているときなどに自分のひとつのプレーで流れは変わる。そういう引き出しも、もっと必要なんじゃないかなと強く感じました。

その意味では対戦したJ2のチームなどを見ているとサッカーのレベルはもちろん高いですし、キャプテンの方もプレー以外のところで周囲を引っ張っていました。例えば、チームを引き締めるために怒るタイミングであったり、そういう方々と実際にマッチアップしたりしながら学べたのも大きかったです。自分はもっとやらなくちゃいけないと実感させられました。

やっぱりキャプテンマークって重みがあるというか、いろんなモノが込められていて、巻くようになってさらに意識は強まりました。本来はキャプテンマークを巻いても、巻かなくても関係なくやらなくちゃいけない。ただ、それこそ監督に信頼してもらっている実感もあった分、その期待に応えたいっていう想いは強かったですね。頼ってもらえるのはシンプルにうれしいことですよ。

自分が分からないこと、どうしたら良いか迷ったときは、ベテランの選手に相談しましたし、自分の経験を少しでも還元できればと、若い子たちとも話すようにしていました。そうやって過ごした半年でもありましたね」

個人的な成績は地域リーグラウンド全18試合で16試合出場(1304分)3得点。出場時間はチーム4位で、得点数はチーム3位。プレーオフラウンド2試合では1試合出場(78分)無得点だった。悔しさも残る。

「率直にもっと取れたと思います。でも、FWやボランチなどさまざまなポジションをやりながら、それぞれに監督、チームから求められる役割があり、チームが勝つのが一番だと考えながらやってきました。改めてFWとして出場したときはもっと結果を残さなくちゃいけなかったですが、J2のチームを相手に(横浜FC戦で)ゴールを奪えたのは、個人的にすごく自信になりました」

一方、チームは前述したようにEAST-Aで7勝(PK勝ち1)11敗(PK負け3)、26得点・36失点の6位で、プレーオフでは2連敗。得点数はグループ4位も、失点数はJ2・J3全40クラブで福島ユナイテッドFCに次ぐワースト2位。崩しの質、後方からのビルドアップ、相手を見た柔軟な戦い方など、成長の跡をしっかりと示しつつ、課題も明確になった。

「序盤戦は試合の入りがあまり良くなく、自分たちのミスから失点し、ゲームを崩してしまった部分がありました。そこは起きてしまったことは仕方ないので、繰り返さないために、試合の入りに関しては口酸っぱく伝え、段々と改善もされ、結果も出始めました。ただ、波に乗れれば良かったんですが、良い内容でも勝てない試合や、勝たないといけない状況で落としてしまった試合など勝負強さという面が足りなかったと感じます。そこを、新シーズンに持ち越さないよう、良い反省と良い準備が大切だと思います。

また失点数もさすがにもうちょっと減らさなくてはいけないと感じます。もちろん攻撃は大事ですが、守備も全員がもうひとつ、意識を合わせる必要があるはずです。

一方で、このチームの可能性は改めて大きいとも感じています。僕自身、昨年からプレーさせてもらい『うまくなっている』『この歳でもまだまだ成長できる』と実感していますから。ただ、勝負事なので、勝たないと意味がないという面もある。だからオキさん(沖田優監督)の攻撃的サッカーにプラスして、守備面で、身体を張るところや、戦う部分など、基礎的なことですけど、当たり前のことをより徹底できないといけない。全員でより戦わないといけないです。今のようにどれだけ良いサッカーをしても、やっぱり勝たないと、目標のJ2復帰には辿り着けないですから。全員が、もう1個、2個、レベルアップしたいですね。

監督は僕らに期待してくれていますし、いろいろなことを話してくれますが、やるのは自分たち。監督に求められることだけじゃなく、それ以上も目指す。全員がそれを表現できれば、このチームは絶対強くなりますよ。そこをチーム全員が練習からより意識すべきですし、伝えるようにしています。でも自分もまだまだ足りないですし、もちろんミスもある。伝え方ももっと上手くできるはずでレベルアップしたいです。

今の群馬は若い選手が多いからこそ、やはり多くの可能性を秘め、僕らだって、期待しているからこそ言っている部分があります。僕が若かった頃は先輩方により厳しい声をかけられましたが、僕はありがたいと思って、分からないことは聞くようにしていました。同じ方法を取る必要はないですが、僕の経験をより伝えられればと考えていました」

それでも自身はザスパで大きな成長を遂げ、クラブの進むべき方向性も間違っていないと確信する。

「ボールを止めるというひとつのプレーにしても細かい変化はありますし、『止めて・蹴る』の基礎練習は本当に積んできました。改めてこの歳で成長を感じられるのは、やっぱりすごいと思います。

オキさん(沖田監督)によく言われたのは、パスを出す味方の足。相手が来ていたら、その逆足に出すなど基礎的なことですが改めて徹底し、練習からそこはみんなかなり意識しています。そういう積み重ねが大切ですよね。だからこそ、僕はこのクラブに呼んでもらえて、このサッカーに出会えて本当に感謝しているんです。

これは、上からの発言のようになってしまうかもしれませんが、やっぱりめちゃくちゃ可能性を秘めているクラブですし、街全体にもっとサッカーを好きになってもらえるはずです。そうすれば、スタジアムのお客さんももっと増やせるはずです。J2復帰がまずは目標ですが、もっと大きいクラブになれると信じています。そのためにもやっぱり結果を残すこと。今のチームは若く、走れて、元気があって、このサッカーでJ2に復帰するのが大事なはずです」

個人的な目標もある。

「今年(11月に)27歳になりますが、まだまだ成長できると実感しています。目標にしたいのは、とにかく成長し続けること。自分がサッカーを辞めるときって、多分、面白くなくなったときだと思うんです。でも今は、そりゃあしんどいときもありますが、結局は成長を含めてすごく楽しい。だから何歳まで続けられるか分からないですが、今はとにかく、前を見続けたいです。日本代表だって、選手なら誰もが目指すところだと自分は思っています」

最後に再度聞いてみた。西村恭史にとって、百年構想リーグはどんな半年だったのか――。

「なんて言えばいいんだろう……難しいですね。ただ、願望も込めて、後から振り返ったときに、『ああ、あの半年があって良かったな』と思える時期にしたいです。それはクラブにとっても、自分にとっても。この歩みを正解にでればと信じています」

挑戦の日々は続いていく。

文:本田健介

カテゴリ:INTERVIEW