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2026.06.11

THESPA TIMES Vol.08 佐藤正美強化部長インタビュー「理想と現実を見ながらのチャレンジ」

百年構想リーグはJ2のベガルタ仙台、横浜FC、湘南ベルマーレらと同組のEAST-Aで大いに健闘して6位に入りつつ、その後のプレーオフでは2連敗を喫した。

それでも数々の収穫を得て、良い意味での課題も確認できた。その経験を含めて改めてザスパ群馬は、来るべき2026/27シーズンへどう臨むのか。J2復帰への道のりを描く、佐藤正美強化部長に展望を聞いた。


明治安田J2・J3百年構想リーグの最終戦。プレーオフラウンド第2戦でのアウェイで、ツエーゲン金沢戦に敗れた帰りの新幹線。

佐藤正美強化部長の隣には前橋育英高校時代の恩師であり、今年1月にザスパのGMに就任した山田耕介氏の姿があった。

「僕にとっての恩師ですが、高校時代はやっぱり恐れ多くて、そんなに長時間話したことはありませんでした。だから金沢からの帰りも1時間半ほどいろいろと話をさせてもらいましたが、まさかこの歳になってこんなに熱くサッカーを語り合うとは思っていませんでした。僕の意見を『なるほどな』と肯定してくれたり、逆に指摘してもらったり、発見の連続で楽しいですね。

確認し合っているのは、やはりトップチームが結果を出し、来季はJ2に戻ることが何より大事で、ただ、クラブが持続的に発展していくためには、アカデミーの充実もすごく大切。そこは山田GMの経験が大いに活きると感じています。まずはしっかりと良い選手を獲得する必要があり、そういう部分はアカデミーと連係して、さまざまな意見を取り入れるようにしているので、すごくポジティブです」

そのなか、J2・J3の40クラブが4つのグループに分かれて戦った百年構想リーグでは、J2の仙台、横浜FC、湘南らと同組であったEAST-Aでザスパは6位。課題も残りつつ、多くの収穫も手にした。

「今までにない新しい仕組みのリーグ戦で、多くのチャレンジができた反面、チャレンジしたからこそ見えてきた課題もあり、それが明確になりました。J2のチームと何試合も戦えたのも良かったですし、正直、最下位を覚悟するなど厳しい時期もありました。とはいえ6位という結果には納得できていませんが、さまざまな意味で実りのあるハーフシーズンだったと感じています。

具体的には、この半年に向けては将来を見据えて高卒、大卒ルーキーを7人獲得し、所属選手の人数自体を増やしてスタートしましたが、若い選手が出場チャンスを掴み、経験を積めたのは良かったです。直近だと(高卒の)原田高虎選手がプロデビューしたり、(プロ3年目の)中野力瑠選手がプロ初ゴールを挙げたり、ポジティブなことが多かったです。

新しいクラブハウス、練習場ができたことで、アカデミーの選手もトップのトレーニングに参加したり、練習試合に加わってもらったり、よりスムーズに連係も取れるようになっています。そこは中長期的に進められていますね」

さらに、見えない部分でも、変化を加えていたという。

「実はコーチングスタッフも、開幕から半分ほどの期間で、役割をローテーションしてみたんです。セットプレーの担当や分析を含めて、明確な役割を決めるのではなく、交代しながら誰もが担当してみる。なかなか結果に直結しなかった面もありましたが、改めて各々の適正を見て、準備につなげることができました。そういう起用や、戦い方の部分も沖田(優)監督としっかりとコミュニケーションを取りながら進めることができました。

それこそ沖田監督の下で、チームは自分たちの理想をだいぶ強く積み上げてきましたが、2026/27シーズンでJ2に戻ることを考えれば、どうやって勝点を積み上げ、勝負をモノにしていくか、そこの意識や戦い方もより取り入れることができました。いわゆる理想と現実を見ながらチャレンジするということです。

例えば、アウェイのヴァンラーレ八戸戦(第14節/1〇0)の戦い方などは、基本路線は変わりませんが、しっかりと現実を見て粘り強く、これまでとは少し異なった戦い方で勝星を掴めました。後方からの作りでも、短いパスだけではなく、中・長距離のパスも織り交ぜながら展開するなど、さまざまな方法を取り入れてきました。ただ、そうすると、少しプレッシャーを受けると長いボールで回避する場面が増えるなど、課題も現われるので、判断力を磨きながら、(第18節の7-2で勝利した)ホームでのSC相模原戦のような試合につなげることもできました。とはいえ、プレーオフの2試合は難しい試合になってしまった(vs岐阜0●1/vs金沢1●4)。その意味で、浮き沈みが大きい点は改善しなくてはいけませんし、そこに対してどれだけしっかりと新シーズンの開幕までに準備できるかがひとつのポイントだと感じています」

沖田監督が目指すのは技術力を大切にし、攻撃を強く意識したサッカーである。尖ったスタイルは最近、より注目を集めるようになっている。もっとも、新シーズンでJ2復帰を目指すクラブにあっては、結果も重要だ。そのバランスを考えた百年構想リーグであったということである。勇気を持って前へ出続けたからこそ失点はかさんでしまったが、チームとしての引き出しを増やしている。

「攻撃的なスタイルを掲げていますが、『失点するのはしょうがない』とは考えていません。勝つため、J2に復帰するため、守備の整理は必要です。そこは沖田監督を始めコーチングスタッフ陣、選手たちもすごくポジティブにトライしてくれているので、確実に成長できていますし、一方でまだ足りない部分もあります。

改めて僕らザスパは攻撃的なスタイルを目指します。そこは全く変えるつもりはありません。ただ、サッカーはどうしても攻守があり、2026/27シーズンでJ2復帰するためには勝たなくてはいけない状況が絶対に出てくる。もしかしたら長い時間頑張って粘り強く戦い、残り1分でカウンターやセットプレーなどで、1-0で勝つ試合も必要になるかもしれない。だからこそ監督たちとも『守備に対してもポジティブにチャレンジできれば良い』と考えを共有できており、先ほど話した八戸戦も、勝点を得るための戦い方を沖田監督も選んでくれました。もう一度強調しますが、僕らのベースは変わりません。でも、監督としっかりと擦り合わせて、現実を見たアプローチもハーフシーズンで実践することができました」

だからこそ勝ち切れなかったプレーオフラウンドの2試合は、今後の大きな糧になる。新シーズンではこうした大一番をしっかりと制することができるかがポイントだ。

「まさに仰るとおりで、大事なゲームでああいう内容をしてしまうと、ダイレクトにダメージを受けてしまう。苦しかったり、コンディションが悪かったりするときは必ずあります。でも、そういうときにいかに粘り強く戦い、自分たちの攻撃のスタイル見せられるか。そういう意味では、プレーオフラウンドの2試合は強化部長としては不満足ですが、そこは監督としっかりと話していますし、選手も理解してくれていると感じます。だからこそ良い反省として前に進みたいですね」

勝負の新シーズンへ選手編成も進めている。ザスパは周囲からの注目度が増す分、苦渋の決断として活躍した選手がステップアップを選択する例も続いている。

「毎回、さまざまな話し合いをしながら、ウィンドウが開くたびに、選手がいわゆる“引き抜かれる”と言いますか、ステップアップしている事実はここ数シーズン続いています。このオフも、もしそういうことが起きる場合に備えて準備はしています。それに今のザスパはスタイルが明確で、素晴らしいクラブハウスも整っている分、僕らから発信できる要素もすごく増え、選手たちにも刺さりやすくなっています。そしてカテゴリーを上げることで、状況はより良くなります。だからこそやはりJ2復帰に向けて誰もが熱い想いを抱えています。

また今後の編成に関しても、広報室ともしっかりとコミュニケーションを取りながらリリースをさせていただきたいと思っています。新シーズン移行に伴いオフは短いですし、契約更新のリリースの仕方も、今オフから一括で出させていただく方法を取ろうと考えています。支えてくださる皆さまに最新の状況をしっかりと伝えるために、引き続き広報室と連携を取っていきたいですね」

新シーズンの開幕は8月に入ってすぐだ。準備の時間は限られている。しかも、誰もが初めての経験となる夏開幕へ未知数な部分も多い。

「どのクラブもそうですが、シーズン移行は初めての経験で、夏のナイターが開幕戦になるので、コンディションの作り方を含め、初めての準備になります。猛暑のなか、開幕時に選手の体重が落ちてしまったら困りますし、トレーニングのボリューム、食事、水分の摂り方などにも神経を使い、周囲とコミュニケーションを取りながら、何がベストか考えていきたいです。開幕からどれだけスイッチを入れていけるか、自信を持っていけるかが重要です。良いスタートを切れるかが、J2復帰への鍵ですからね」

改めて決意を語ってもらった。

「さきほども話したように指針は変わりませんし、ブレることは全くありません。ただ、このハーフシーズンもそうでしたが、長いシーズン、良い試合や良い時間帯だけでなく、苦しい時期、苦しい時間帯は必ずあります。ベースを維持しながら、粘り強さ、単純に走り勝つ、競り勝つという部分もきっちりと表現できるような準備をして、理想と現実のバランスをしっかりと捉え、その都度、沖田監督や山田GM、スタッフ陣と話し合っていきたいです。

ザスパのスタイルを新しく作っていくフェーズのなかで沖田監督はクラブや強化部の意見も受け入れてくれ、判断してくれています。もちろん僕らの意見がすべてだとは思わないので、監督にうまく噛み砕いてもらい、お互いに良い方向に進めるようなコミュニケーションを取っていきたいです。伸びしろは十分にあります。

(百年構想リーグのホーム平均観客は3,424人だったが)やっぱり観ていてエキサイティングな内容が面白いはずですし、そういう部分で自分たちのスタイルを大切にしていきたい。結果はもちろん、内容に関しても皆さんが『ザスパ群馬ってこうだよね』って話をしてもらえるようになっていきたいです。Jリーグに60クラブあるなかで、観ていて面白い、また観たいと、選ばれるクラブにならなくてはいけない。理想と現実、結果とスタイル、両方をこれからも追い求めていきたいです」

指針をブラさず、クラブにかかわる全員が手を取り合って、悲願のJ2復帰へ。ザスパは勝負の新シーズンを目指す。

文:本田健介

カテゴリ:INTERVIEW