ザスパ群馬
群馬
NDソフトスタジアム山形
前半
後半
試合前
モンテディオ山形
山形
成長を示すには“もってこい” さらなる戦力の台頭にも期待
「この(明治安田J2・J3)百年構想リーグだけじゃなくて、自分が監督になってから、こういう勝ち方は初めてだったんじゃないかと思っています」
試合の翌日、ヴァンラーレ八戸戦の振り返りの中で沖田優監督は、少しはにかみながら勝ち方について触れた。前節は通算4戦目にして、対・ヴァンラーレ八戸の初勝利。しかし、その内容はセットプレーの1点を生かしての粘り勝ち。沖田監督は「こういう勝ち方もできるようになったのは大きな一歩」としつつも、「理想的なゲームになったかというと全くそうではなかった。攻撃を見ると相当課題の多い試合」と口にしており、反省点も多いという面持ちだった。
ただ、守勢に回る時間が長かった割には、ヒヤリとするシーンは少なかった印象もある。防戦一方の時間帯はあれど、いまにも決壊しそうというところまで畳かけられることはなかった。それについて、沖田監督は「時間帯によってはある意味、しっかりと自分たちのコントロール下にあった」と分析し、最後尾を守っていたGK近藤壱成も「僕自身が何かするというようなシーンは本当に少なかったですし、ボールを持たれる時間は長かったですが『やられる』という空気もなかった」と振り返っている。
これまでであれば、1対1の守備でかわされ、自陣ゴール前でクリアしきれないなど、エアポケットのようになってフィニッシュを許していたであろうシーンがいくつかあったはず。しかし、近藤が「競ったその次の反応がすごく良かった」と語ったように、すかさず味方がスペースを埋めてシュートコースを消していた。前半終了間際の45+2分のシーンが顕著だったが、感じさせたのは守備意識の高さ。八戸戦の勝利が「いい成功体験」(近藤)になったことは間違いない。
ただ、これもすでに過去のこと。今節は“東北アウェイ連戦”が待っている。中2日で引き続きアウェイマッチとなるため、前日移動を含めると準備期間はないに等しい。沖田監督は「(モンテディオ)山形さんはホームでの連戦なので、多少の不利はある」と語る一方で「若い選手が多い中でいい経験ができる」と歓迎もしていた。出番を待つ選手たちに加えて、スタメン5名を入れ替えて前節に臨んだことで休養が取れた選手もいる。今節もメンバー選考は読めないが、さらなる戦力の台頭にも期待したい。
シーズン後半戦の戦績を見ると、3勝2敗と勝ち越し中。5チーム中3チームには、最初の対戦で敗れた借りを返してきた。今節の山形戦もリベンジに臨む試合となるが、前回対戦は「個人的にはこれまでで一番良かった試合じゃないかと思うくらい、チャンスも作れていたし決定機も作れていた」(近藤)試合でもあった。沖田監督も「サッカーは内容で(競うスポーツで)はないですが、この内容で負けるのはちょっと痛すぎるという試合だった」と悔しさを忘れていない。もちろん、相手のある競技において同じ内容を表現できる保証はないが、いまのザスパならば優勢を保ちながら勝つパターンと、苦しみながらも勝ち切るパターンのどちらも可能なはず。シーズン序盤からの成長を見定めるにはもってこいの一戦かもしれない。
文:沖永雄一郎(エル・ゴラッソ群馬担当)
沖田 優監督 Q.前節はヴァンラーレ八戸戦初勝利となりましたが、メンバーをかなり代えて臨んだ試合でした。 「みんながいい準備をできていましたし、連戦でもありますし、いい区切りのときにプレー時間やチャンスがあればと思っていた選手がたくさんいましたから。その全員を起用できたわけではなかったですが、いい形で融合できたかなと思います」
Q.八戸対策の意識が強めだったようにも見えたのですが……。 「対策というよりは、自分たちの攻め方、守り方の引き出しをもっと増やしていかなければいけないという作業の一つという感覚です」
Q.それは、試合前に仰っていた「少し違う課題感やチャレンジ」なのでしょうか。 「それも一部含まれていましたし、シンプルに『八戸さんと対戦すると大体こういう試合になる』という予測の部分もありました。理想的なゲームになったかというと全くそうではなかったですが、そういう展開のゲームならゲームでしっかりと戦うというところは、これまでの八戸戦よりも対応できたんじゃないかと思います」
Q.今季はこれで、90分で勝敗が決したのは4試合目となりましたが、その中で、最もザスパらしさを出さない勝利だったと言えるかもしれません。そういった意味でも、逆に価値ある勝利だったのではないでしょうか。 「この(明治安田J2・J3)百年構想リーグだけじゃなくて、自分が監督になってから、こういう勝ち方は初めてだったんじゃないかと思っています。こういう勝ち方もできるようになったのは大きな一歩だと思います」
Q.今後のリードした試合の終盤全般に生きてくる試合だったようにも思えますが、いかがでしょうか。 「この百年構想リーグでさまざまなタイプのチームと対戦できる中で、それは当初から話していたことの一つでもあります。自分たちのスタイルの精度を高めると同時に、いろいろなオプションや引き出しを増やしていくためにじわじわとやってきました。そういう良さは、結果的にあったのかなと思います」
Q.押し込まれる時間帯は長かったですが、そこまで大きなチャンスを作られていないようにも感じました。 「そうですね。時間帯によっては、しっかりと自分たちのコントロール下にあったと思います。それが完全にできていなかったとしても、その時間にゲームを決定づけさせない、動かせないという、やるべきことをやれた時間は長かったんじゃないかと思います。もちろんシュートは打たれましたしピンチもありましたけど、確率的には少し下げられたというゲームでした。相手に得点を与えずにセットプレーで取った1点で試合を終わらせるというのは簡単なことではないと思いますから、成長が見られた1試合だったと思います」
Q.青森での試合ということで、試合後は秋元琉星選手がピックアップされましたが、田中翔太選手も今年初先発でした。本来はストライカー的な選手だと思いますが、逆サイドからのクロス対応といった守備でも貢献していました。 「彼はもっともっといろいろなポジションができるんじゃないかというくらい才能豊かな部分があると思っています。昨季より、本人もいろいろなポジションができるような選手になりたいというイメージがあり、それは一致しているので、いいチャレンジをしてくれていると思います。出身県こそ違いますが彼も(秋元選手と同じ)青森山田高校出身ですし、チャンスを生かして勝利に導いてくれたと思っています」
Q.前節の終盤に、もっと焦らずに攻められたという感覚はありますか。 「それはもう終始ですし、前半はもっともっとやらなきゃいけなかったと思います。後半は後半で、前半よりもいい状態までもっていけましたが、それをもっとやらなければいけませんでした。流れから点を取れなかったですし、シュート数も増やせず、ペナルティーエリアへの進入回数も少なかったです。無失点で終えられたのはいいところですが、攻撃だけを見ると相当課題の多い試合だったと思います」
Q.さて、次はモンテディオ山形戦です。前回対戦時はPK戦で敗れましたが、かなり持ち味を出したゲームだったと思います。内容の再現と勝利を求めたいところですか。 「前回とはうちも山形さんも違う状態だと思いますので、全く同じ試合になるとは思っていません。前回について、あの時期の試合としてはすごく攻撃の良さが多く出ていました。正直、(90分で)勝ち切りたかった試合でしたけど引き分けで終わってしまい、(結果的には)PKで負けてしまった。サッカーは内容で(競うスポーツで)はないですが、この内容で負けるのはちょっと痛すぎるという試合だったと思います。もう少し内容が悪かったとしても、今度こそはちゃんと勝てるようにしたいです」
Q.前節までは中3日でしたが、今回は中2日で再び東北へ移動してのハードなアウェイ連戦になります。 「山形さんはステイ(=ホームでの連戦)なので、多少の不利はあります。でも、中2日から中2日の日程というのはなかなかないと思いますし、若い選手が多い中でいい経験ができる場だと思います。そういう準備をしっかりしようとみんなで共有できているので、大丈夫だと思っています」
GK 13 近藤 壱成 Q.前節・ヴァンラーレ八戸戦では選手の立ち位置がいつもとは少し違っていたように見えました。 「コンセプトは変わっていませんが、相手がしたい形でプレスを受けてしまうのではなく、相手がプレスしづらい形や、どう無駄走りをさせるかというところの提示がチームからありました。(連戦なので)十分なトレーニング時間は積めませんでしたが、相手のプレッシャーをどう剥がすかというところは、日々それぞれが意識してやっていると思うので、だからこそできたと思います」
Q.守備に回る時間も長かったですが、全員が体を張ってクロスにもしっかりと対応していたと思います。後ろから見ていていかがでしたか。 「僕自身が何かするようなシーンは本当に少なかったですし、ボールを持たれる時間は長かったですが『やられる』という空気もなかったですね。セットプレーや自分たちのミスが起きる以外は失点する空気もなかったです。全員が粘り強く戦うところはできていたと思います」
Q.今季の勝利の中では一番スタイルを出さなかった試合だったかもしれません。それでも勝てたことは自信になるでしょうか。 「そうですね。自分たちの引き出しを増やすという意味でもそうですし、次の2026/27シーズンに昇格するところから逆算すると、自分たちのスタイルだけではうまくいかないと思うので、どうやって勝点を拾っていくか、勝利に持っていくかという意味ではすごくいい成功体験だったと思います。それは八戸のようなスタイルのチームが相手だからというわけでもなく、例えば2-0で勝っているラスト20分の時間の使い方などにも生きてくるところだと思っています」
Q.ラストプレーは飛距離が出て、あわやゴールというキックでしたね。 「全く狙っていないですけど……(笑)。試合中はそんなに惜しいとは思っていなかったのですが、(あとから)映像で見たらちょっと惜しかったですね。風にもうまく乗りました」
Q.チーム全体でも、クロスやハイボールによく対応できていたのではないでしょうか。 「相手のやりたいことはそこでしたし、自分たちがそれに対してどう守るかがポイントでした。競った次の反応が非常に良かった印象はあります。僕が前に出で大きく弾けなかったシーンでも、そのあとのカバーがすぐに2枚ぐらい来ていることもありました。ヘディングに対して最初に競った選手の次の選手が早く来ることもできていました。一人がどうこうというよりも、チーム全体でゴールを守ることに対しての意識はすごく良くなってきていると思います」
Q.次の対戦相手であるモンテディオ山形、その次のブラウブリッツ秋田と、空中戦が増えそうですが、その試合に向けてどう戦っていきますか。 「八戸戦とは全く異なる試合展開になると思います。勝ちましたけど目指しているものはあのような形ではなく、もっと自分たちのサッカーをよくできる部分もあると思います。前回対戦時の山形戦に僕は出ていなかったのですが、個人的にはこれまでで一番良かった試合なんじゃないかと思うくらいチャンスを作れていましたし、決定機も作れていました。でも、先に失点して、なんとか追いつきましたがPKで負けたという試合でした。相手がどう出てくるかは分からないですが、自分たちのスタイルをぶつけるという意味ではすごくいい試合にできると思いますし、その中でも八戸戦でやったような守り抜く時間帯も絶対にあると思います。その両面を見せて連勝できればと思います」
FW 18 田中 翔太 Q.前節のヴァンラーレ八戸戦はチームとしては今季初のクリーンシートでした。田中選手自身、今季初スタメンでしたが、まずは試合を振り返っていただけますか。 「メンバーが多少変わった中の試合でしたが、選手一人ひとりがチームのために戦って、八戸さんの体を張ったり走ったりというサッカーに対して負けることがなかったので、それが無失点につながったと思います。流れの中でのゴールは取れませんでしたが、ああいう試合をセットプレーから点を取って勝ち切るということも、上に行くには大切なことだと思います。どんな形であれ勝たなければ意味がないと思うので、良かったと思います」
Q.今季の勝利の中では、最もザスパらしさを出さなかった試合だったかもしれません。逆に自信になるのではないでしょうか。 「自分たちの色はあまり出せませんでしたが、八戸さんの得意とするサッカーで勝ち切ったというのはポジティブです。今シーズン初のスタメンで点は取れなかったですが、チームが勝つことが一番なので良かったと思います」
Q.八戸が左サイドから攻めてくる中で田中選手がクリアしたシーンが何度もありました。 「相手の両ワイドはゴール前にも入ってくるくらい運動量がすごいですし、スプリント数も多いので、僕もそれに負けずに、守備では相手より早く戻って、攻撃では相手よりも早く出て行くという気持ちで臨んでしました。無失点で終われましたが、僕はゴールを取れていないので、うれしいですけど悔しかったという感じです」
Q.プロ1年目のガイナーレ鳥取では8ゴールを挙げています。もっとゴールに絡んでいきたいという気持ちは強いでしょうか。 「自分に与えられたチャンスを生かしてやっていくしかないですし、ポジションがどこであろうとチームのために戦うことに変わりはないです。戦うという部分は今回の試合で出せたと思いますが、得点を量産するという気持ちで群馬に来たのにもかかわらずなかなか結果を残せていないので、ゴールを取ることと、チームために戦うという気持ちをもって残り試合を頑張っていきたいと思います」
Q.前節は高校・大学の後輩でもある秋元琉星選手が青森出身ということで注目されましたが、田中選手も同じ青森山田高校の出身です。青森での試合について特別な思いはありましたか。 「高校時代からプレーしていたスタジアムだったので、思い出もありました。秋元とは高校も大学も一緒で、(秋元選手が)デビュー戦でキャプテンマークをつけて、青森での試合で、同じスタメンで出場するという状況だったので、絶対に勝たせたいという思いはありました。まあ、本人が一番気持ち良かったんじゃないですかね(笑)」
Q.シーズンも残りが少なくなってきましたが、どのように次のシーズンにつなげていきたいですか。 「連勝するということよりも、一戦一戦を戦い抜くということが大切だと思いますし、一戦一戦にこだわっていけば連勝も重なってくると思います。そこを目指しながら、個人としてはやっぱりまだ数字を残せていないので、どんな形で(試合に)出ようと数字を残す、ゴールを決めてチームを勝たせる、ということが僕の思いです。それを表現できたらいいなと思っています」
DF 25 中野 力瑠 Q.前節のヴァンラーレ八戸戦は3月のSC相模原戦以来、10試合ぶりの出場となりました。試合終盤の投入となりましたが、監督からはどういった指示を受けて入ったのでしょうか。 「5枚で守る最終ラインの一番右外に入りましたが、1-0だったのでクローザーという役割です。無失点で終わり切るのと、前に行くのは自分の強みでもあるので、機会があれば出て行くということで入りました」
Q.今シーズンの勝ち試合の中では、最もザスパらしさを出さなかった試合だったかもしれません。 「うちは“超攻撃的”というのを掲げていますが、最後のところでの泥臭いプレーもすごく必要ですし、今季のザスパに少し足りていない部分でもあったと思います。ザスパらしくないという言い方もできるかもしれませんが、ポジティブに言えば、そうした1-0の試合を締めるという新しいゲームプランを見せることができたので、そこは良かったと思います」
Q.まだそれほど長い時間のプレーを見せられていませんが、改めてファン・サポーターの皆さんに見てほしいストロングポイントを教えてください。 「どのポジションで出るかわかりませんが、ロングボールやパスの精度、スピードのあるドリブルを見ていただけたらと思います」
Q.出身地は東京都ですが、桐生第一高校卒ということで地元出身選手のように期待されているかと思います。 「高校で3年とプロで3年だから、もう6年目ですね。もはや第2の故郷です。高校から群馬に来て、その群馬に(プロとして)呼んでもらったという恩があるので、群馬のサッカーを盛り上げる一員としてプレーできたらと思います」
Q.百年構想リーグも残りも少なくなってきましたが、残り試合を次の2026/27シーズンにどうつなげていきたいですか。 「残り試合は少ないですけど、その中で少しでも多くの時間をプレーして、しっかりと勝ちにこだわりつつ、少しでも順位を上げるためにチームに貢献できるようにやっていきたいと思います」
成長を示すには“もってこい”
さらなる戦力の台頭にも期待
「この(明治安田J2・J3)百年構想リーグだけじゃなくて、自分が監督になってから、こういう勝ち方は初めてだったんじゃないかと思っています」
試合の翌日、ヴァンラーレ八戸戦の振り返りの中で沖田優監督は、少しはにかみながら勝ち方について触れた。前節は通算4戦目にして、対・ヴァンラーレ八戸の初勝利。しかし、その内容はセットプレーの1点を生かしての粘り勝ち。沖田監督は「こういう勝ち方もできるようになったのは大きな一歩」としつつも、「理想的なゲームになったかというと全くそうではなかった。攻撃を見ると相当課題の多い試合」と口にしており、反省点も多いという面持ちだった。
ただ、守勢に回る時間が長かった割には、ヒヤリとするシーンは少なかった印象もある。防戦一方の時間帯はあれど、いまにも決壊しそうというところまで畳かけられることはなかった。それについて、沖田監督は「時間帯によってはある意味、しっかりと自分たちのコントロール下にあった」と分析し、最後尾を守っていたGK近藤壱成も「僕自身が何かするというようなシーンは本当に少なかったですし、ボールを持たれる時間は長かったですが『やられる』という空気もなかった」と振り返っている。
これまでであれば、1対1の守備でかわされ、自陣ゴール前でクリアしきれないなど、エアポケットのようになってフィニッシュを許していたであろうシーンがいくつかあったはず。しかし、近藤が「競ったその次の反応がすごく良かった」と語ったように、すかさず味方がスペースを埋めてシュートコースを消していた。前半終了間際の45+2分のシーンが顕著だったが、感じさせたのは守備意識の高さ。八戸戦の勝利が「いい成功体験」(近藤)になったことは間違いない。
ただ、これもすでに過去のこと。今節は“東北アウェイ連戦”が待っている。中2日で引き続きアウェイマッチとなるため、前日移動を含めると準備期間はないに等しい。沖田監督は「(モンテディオ)山形さんはホームでの連戦なので、多少の不利はある」と語る一方で「若い選手が多い中でいい経験ができる」と歓迎もしていた。出番を待つ選手たちに加えて、スタメン5名を入れ替えて前節に臨んだことで休養が取れた選手もいる。今節もメンバー選考は読めないが、さらなる戦力の台頭にも期待したい。
シーズン後半戦の戦績を見ると、3勝2敗と勝ち越し中。5チーム中3チームには、最初の対戦で敗れた借りを返してきた。今節の山形戦もリベンジに臨む試合となるが、前回対戦は「個人的にはこれまでで一番良かった試合じゃないかと思うくらい、チャンスも作れていたし決定機も作れていた」(近藤)試合でもあった。沖田監督も「サッカーは内容で(競うスポーツで)はないですが、この内容で負けるのはちょっと痛すぎるという試合だった」と悔しさを忘れていない。もちろん、相手のある競技において同じ内容を表現できる保証はないが、いまのザスパならば優勢を保ちながら勝つパターンと、苦しみながらも勝ち切るパターンのどちらも可能なはず。シーズン序盤からの成長を見定めるにはもってこいの一戦かもしれない。
文:沖永雄一郎(エル・ゴラッソ群馬担当)
沖田 優監督
Q.前節はヴァンラーレ八戸戦初勝利となりましたが、メンバーをかなり代えて臨んだ試合でした。
「みんながいい準備をできていましたし、連戦でもありますし、いい区切りのときにプレー時間やチャンスがあればと思っていた選手がたくさんいましたから。その全員を起用できたわけではなかったですが、いい形で融合できたかなと思います」
Q.八戸対策の意識が強めだったようにも見えたのですが……。
「対策というよりは、自分たちの攻め方、守り方の引き出しをもっと増やしていかなければいけないという作業の一つという感覚です」
Q.それは、試合前に仰っていた「少し違う課題感やチャレンジ」なのでしょうか。
「それも一部含まれていましたし、シンプルに『八戸さんと対戦すると大体こういう試合になる』という予測の部分もありました。理想的なゲームになったかというと全くそうではなかったですが、そういう展開のゲームならゲームでしっかりと戦うというところは、これまでの八戸戦よりも対応できたんじゃないかと思います」
Q.今季はこれで、90分で勝敗が決したのは4試合目となりましたが、その中で、最もザスパらしさを出さない勝利だったと言えるかもしれません。そういった意味でも、逆に価値ある勝利だったのではないでしょうか。
「この(明治安田J2・J3)百年構想リーグだけじゃなくて、自分が監督になってから、こういう勝ち方は初めてだったんじゃないかと思っています。こういう勝ち方もできるようになったのは大きな一歩だと思います」
Q.今後のリードした試合の終盤全般に生きてくる試合だったようにも思えますが、いかがでしょうか。
「この百年構想リーグでさまざまなタイプのチームと対戦できる中で、それは当初から話していたことの一つでもあります。自分たちのスタイルの精度を高めると同時に、いろいろなオプションや引き出しを増やしていくためにじわじわとやってきました。そういう良さは、結果的にあったのかなと思います」
Q.押し込まれる時間帯は長かったですが、そこまで大きなチャンスを作られていないようにも感じました。
「そうですね。時間帯によっては、しっかりと自分たちのコントロール下にあったと思います。それが完全にできていなかったとしても、その時間にゲームを決定づけさせない、動かせないという、やるべきことをやれた時間は長かったんじゃないかと思います。もちろんシュートは打たれましたしピンチもありましたけど、確率的には少し下げられたというゲームでした。相手に得点を与えずにセットプレーで取った1点で試合を終わらせるというのは簡単なことではないと思いますから、成長が見られた1試合だったと思います」
Q.青森での試合ということで、試合後は秋元琉星選手がピックアップされましたが、田中翔太選手も今年初先発でした。本来はストライカー的な選手だと思いますが、逆サイドからのクロス対応といった守備でも貢献していました。
「彼はもっともっといろいろなポジションができるんじゃないかというくらい才能豊かな部分があると思っています。昨季より、本人もいろいろなポジションができるような選手になりたいというイメージがあり、それは一致しているので、いいチャレンジをしてくれていると思います。出身県こそ違いますが彼も(秋元選手と同じ)青森山田高校出身ですし、チャンスを生かして勝利に導いてくれたと思っています」
Q.前節の終盤に、もっと焦らずに攻められたという感覚はありますか。
「それはもう終始ですし、前半はもっともっとやらなきゃいけなかったと思います。後半は後半で、前半よりもいい状態までもっていけましたが、それをもっとやらなければいけませんでした。流れから点を取れなかったですし、シュート数も増やせず、ペナルティーエリアへの進入回数も少なかったです。無失点で終えられたのはいいところですが、攻撃だけを見ると相当課題の多い試合だったと思います」
Q.さて、次はモンテディオ山形戦です。前回対戦時はPK戦で敗れましたが、かなり持ち味を出したゲームだったと思います。内容の再現と勝利を求めたいところですか。
「前回とはうちも山形さんも違う状態だと思いますので、全く同じ試合になるとは思っていません。前回について、あの時期の試合としてはすごく攻撃の良さが多く出ていました。正直、(90分で)勝ち切りたかった試合でしたけど引き分けで終わってしまい、(結果的には)PKで負けてしまった。サッカーは内容で(競うスポーツで)はないですが、この内容で負けるのはちょっと痛すぎるという試合だったと思います。もう少し内容が悪かったとしても、今度こそはちゃんと勝てるようにしたいです」
Q.前節までは中3日でしたが、今回は中2日で再び東北へ移動してのハードなアウェイ連戦になります。
「山形さんはステイ(=ホームでの連戦)なので、多少の不利はあります。でも、中2日から中2日の日程というのはなかなかないと思いますし、若い選手が多い中でいい経験ができる場だと思います。そういう準備をしっかりしようとみんなで共有できているので、大丈夫だと思っています」
GK 13 近藤 壱成
Q.前節・ヴァンラーレ八戸戦では選手の立ち位置がいつもとは少し違っていたように見えました。
「コンセプトは変わっていませんが、相手がしたい形でプレスを受けてしまうのではなく、相手がプレスしづらい形や、どう無駄走りをさせるかというところの提示がチームからありました。(連戦なので)十分なトレーニング時間は積めませんでしたが、相手のプレッシャーをどう剥がすかというところは、日々それぞれが意識してやっていると思うので、だからこそできたと思います」
Q.守備に回る時間も長かったですが、全員が体を張ってクロスにもしっかりと対応していたと思います。後ろから見ていていかがでしたか。
「僕自身が何かするようなシーンは本当に少なかったですし、ボールを持たれる時間は長かったですが『やられる』という空気もなかったですね。セットプレーや自分たちのミスが起きる以外は失点する空気もなかったです。全員が粘り強く戦うところはできていたと思います」
Q.今季の勝利の中では一番スタイルを出さなかった試合だったかもしれません。それでも勝てたことは自信になるでしょうか。
「そうですね。自分たちの引き出しを増やすという意味でもそうですし、次の2026/27シーズンに昇格するところから逆算すると、自分たちのスタイルだけではうまくいかないと思うので、どうやって勝点を拾っていくか、勝利に持っていくかという意味ではすごくいい成功体験だったと思います。それは八戸のようなスタイルのチームが相手だからというわけでもなく、例えば2-0で勝っているラスト20分の時間の使い方などにも生きてくるところだと思っています」
Q.ラストプレーは飛距離が出て、あわやゴールというキックでしたね。
「全く狙っていないですけど……(笑)。試合中はそんなに惜しいとは思っていなかったのですが、(あとから)映像で見たらちょっと惜しかったですね。風にもうまく乗りました」
Q.チーム全体でも、クロスやハイボールによく対応できていたのではないでしょうか。
「相手のやりたいことはそこでしたし、自分たちがそれに対してどう守るかがポイントでした。競った次の反応が非常に良かった印象はあります。僕が前に出で大きく弾けなかったシーンでも、そのあとのカバーがすぐに2枚ぐらい来ていることもありました。ヘディングに対して最初に競った選手の次の選手が早く来ることもできていました。一人がどうこうというよりも、チーム全体でゴールを守ることに対しての意識はすごく良くなってきていると思います」
Q.次の対戦相手であるモンテディオ山形、その次のブラウブリッツ秋田と、空中戦が増えそうですが、その試合に向けてどう戦っていきますか。
「八戸戦とは全く異なる試合展開になると思います。勝ちましたけど目指しているものはあのような形ではなく、もっと自分たちのサッカーをよくできる部分もあると思います。前回対戦時の山形戦に僕は出ていなかったのですが、個人的にはこれまでで一番良かった試合なんじゃないかと思うくらいチャンスを作れていましたし、決定機も作れていました。でも、先に失点して、なんとか追いつきましたがPKで負けたという試合でした。相手がどう出てくるかは分からないですが、自分たちのスタイルをぶつけるという意味ではすごくいい試合にできると思いますし、その中でも八戸戦でやったような守り抜く時間帯も絶対にあると思います。その両面を見せて連勝できればと思います」
FW 18 田中 翔太
Q.前節のヴァンラーレ八戸戦はチームとしては今季初のクリーンシートでした。田中選手自身、今季初スタメンでしたが、まずは試合を振り返っていただけますか。
「メンバーが多少変わった中の試合でしたが、選手一人ひとりがチームのために戦って、八戸さんの体を張ったり走ったりというサッカーに対して負けることがなかったので、それが無失点につながったと思います。流れの中でのゴールは取れませんでしたが、ああいう試合をセットプレーから点を取って勝ち切るということも、上に行くには大切なことだと思います。どんな形であれ勝たなければ意味がないと思うので、良かったと思います」
Q.今季の勝利の中では、最もザスパらしさを出さなかった試合だったかもしれません。逆に自信になるのではないでしょうか。
「自分たちの色はあまり出せませんでしたが、八戸さんの得意とするサッカーで勝ち切ったというのはポジティブです。今シーズン初のスタメンで点は取れなかったですが、チームが勝つことが一番なので良かったと思います」
Q.八戸が左サイドから攻めてくる中で田中選手がクリアしたシーンが何度もありました。
「相手の両ワイドはゴール前にも入ってくるくらい運動量がすごいですし、スプリント数も多いので、僕もそれに負けずに、守備では相手より早く戻って、攻撃では相手よりも早く出て行くという気持ちで臨んでしました。無失点で終われましたが、僕はゴールを取れていないので、うれしいですけど悔しかったという感じです」
Q.プロ1年目のガイナーレ鳥取では8ゴールを挙げています。もっとゴールに絡んでいきたいという気持ちは強いでしょうか。
「自分に与えられたチャンスを生かしてやっていくしかないですし、ポジションがどこであろうとチームのために戦うことに変わりはないです。戦うという部分は今回の試合で出せたと思いますが、得点を量産するという気持ちで群馬に来たのにもかかわらずなかなか結果を残せていないので、ゴールを取ることと、チームために戦うという気持ちをもって残り試合を頑張っていきたいと思います」
Q.前節は高校・大学の後輩でもある秋元琉星選手が青森出身ということで注目されましたが、田中選手も同じ青森山田高校の出身です。青森での試合について特別な思いはありましたか。
「高校時代からプレーしていたスタジアムだったので、思い出もありました。秋元とは高校も大学も一緒で、(秋元選手が)デビュー戦でキャプテンマークをつけて、青森での試合で、同じスタメンで出場するという状況だったので、絶対に勝たせたいという思いはありました。まあ、本人が一番気持ち良かったんじゃないですかね(笑)」
Q.シーズンも残りが少なくなってきましたが、どのように次のシーズンにつなげていきたいですか。
「連勝するということよりも、一戦一戦を戦い抜くということが大切だと思いますし、一戦一戦にこだわっていけば連勝も重なってくると思います。そこを目指しながら、個人としてはやっぱりまだ数字を残せていないので、どんな形で(試合に)出ようと数字を残す、ゴールを決めてチームを勝たせる、ということが僕の思いです。それを表現できたらいいなと思っています」
DF 25 中野 力瑠
Q.前節のヴァンラーレ八戸戦は3月のSC相模原戦以来、10試合ぶりの出場となりました。試合終盤の投入となりましたが、監督からはどういった指示を受けて入ったのでしょうか。
「5枚で守る最終ラインの一番右外に入りましたが、1-0だったのでクローザーという役割です。無失点で終わり切るのと、前に行くのは自分の強みでもあるので、機会があれば出て行くということで入りました」
Q.今シーズンの勝ち試合の中では、最もザスパらしさを出さなかった試合だったかもしれません。
「うちは“超攻撃的”というのを掲げていますが、最後のところでの泥臭いプレーもすごく必要ですし、今季のザスパに少し足りていない部分でもあったと思います。ザスパらしくないという言い方もできるかもしれませんが、ポジティブに言えば、そうした1-0の試合を締めるという新しいゲームプランを見せることができたので、そこは良かったと思います」
Q.まだそれほど長い時間のプレーを見せられていませんが、改めてファン・サポーターの皆さんに見てほしいストロングポイントを教えてください。
「どのポジションで出るかわかりませんが、ロングボールやパスの精度、スピードのあるドリブルを見ていただけたらと思います」
Q.出身地は東京都ですが、桐生第一高校卒ということで地元出身選手のように期待されているかと思います。
「高校で3年とプロで3年だから、もう6年目ですね。もはや第2の故郷です。高校から群馬に来て、その群馬に(プロとして)呼んでもらったという恩があるので、群馬のサッカーを盛り上げる一員としてプレーできたらと思います」
Q.百年構想リーグも残りも少なくなってきましたが、残り試合を次の2026/27シーズンにどうつなげていきたいですか。
「残り試合は少ないですけど、その中で少しでも多くの時間をプレーして、しっかりと勝ちにこだわりつつ、少しでも順位を上げるためにチームに貢献できるようにやっていきたいと思います」