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2026.02.07

THESPA TIMES Vol.06 沖田優監督インタビュー「すべては攻撃の時間を増やすため」

監督挑戦1年目は紆余曲折ありながら、魅力的な攻撃サッカーでシーズン終盤に成果を示した。その物語の続きとなる沖田体制2年目がいよいよ始まる。指針にブレはない。強度アップや守備の整理も引き続き進めるが、それはすべての基準を上げ、攻撃の時間を増やすため。すべては、夏からのシーズンで、J3で“上”を歩き続けられるチームになるために――。シーズン移行前に行われる特別大会、明治安田J2・J3百年構想リーグでは格上のチームとの対戦も多いが、真っ向勝負する決意である。ワクワクするような新たな戦いが始まる。


2026年の始動日。

昨季、46歳にして監督キャリアをスタートさせた沖田優にとって2度目のシーズンインだ。新加入選手たちもいたなか、初日のミーティングにはそこまで時間をかけなかった。

伝えたのは目指すべき方向性に一切のブレはなく、すべての面で基準を上げていこうというメッセージだった。

見ている人たちの心を掴むような攻撃的なマインドを持ち続け、攻撃の質を上げるためにひとつずつの技術を伸ばし、攻撃の時間を増やすためにプレー強度を上げ、守備の整備も行なう。それは昨年過ごしてきた365日となんら変わらない。だからこそ、サッカーを楽しむためにも、己を磨くためにも、早くピッチでボールを蹴ろう――。始動日のミーティングには指揮官のそんな想いが込められていたのだろう。

選手たちも沖田監督の心意気と哲学を理解しているからこそ、向上心を持って一本のパス、ひとつのトラップにこだわり、そんな彼らの背中を見た新戦力たちが“ザスパの基準”を覚えていく。好循環が生まれている始動からの約4週間、プレシーズンは手応えに満ちていると指揮官は振り返る。

「進化の歩みという点でも、立ち上げからすごく良い時間を過ごせていると感じます。攻撃的なマインドを持ったチームとして特に攻撃の形、バリエーションなどを1年徹底してやってきた昨シーズンでしたが、それと同時進行で少しずつ守備の整理を加えながら、年間通して強度も高めてきました。シーズン終盤はそのあたりのレベルが上がってきたことも実感できました。それを継続して、チーム全体で基準をより引き上げようと取り組めています。

新加入の選手もいますが、多くの戦力が残ってくれているので、その上積みは大きいです。攻撃はさらに進化させますし、守備整理ももっと加速させる。そこを今年の頭からやることができています」

新シーズンに向かうにあたっては、複数人の入れ替えはあった。現有戦力を極力維持しながら、DF高橋勇利也はJ2のいわきFCに、MF山内陸はテゲバジャーロ宮崎に移籍するなどした一方で、MF神垣陸やFW百田真登らフレッシュな顔ぶれを加えた。

「選手数が増えましたが、選手自身が作り出してくれる雰囲気は昨年と変わっていません。みんなが大きな野心を持ち、サッカーに注力してくれている。楽しみながら向上していく考えをチーム内で共有できています。さらに新戦力の選手たちも、攻撃力を上げるためにトータルの力を上げていくというテーマを一緒になって遂行してくれています。1年間やってきた選手たちとの良い競争が生まれ、底上げができているとも感じます。

また、スタッフ陣も3人加わってくれて(依田光正コーチ、金成勇コーチ兼通訳、水原大樹GKコーチ)、選手たちの人数が増えた分も精力的に指導にあたってくれています。選手やスタッフの数が昨シーズンより増えたことで(J2・J3の計40チームが地域ごとに10チームずつに分かれる)百年構想リーグでは近い地域の対戦相手も多いですし、キックオフ時間も安定しているため、練習試合を組みやすいメリットもあります。

だからこそ、チームの力を底上げできるようにと、明確な意図を持って選手数、それに伴うスタッフの人数を増やしました。そこはクラブがしっかりと考え、強化してくれたことに監督としては感謝しかありません。昨年も赤堀(洋/今年1月31日に退任)会長、細貝(萌)社長を筆頭に皆さんが苦しいときこそ支えてくれたので歩みを進めることができます」

沖田監督がそう語るように選手たちは切磋琢磨を続け、レベルアップを目指し続けている。そのなかで指揮官はより高みへ、日本代表の映像なども選手たちに見せ、イメージを膨らませる作業も進めているという。

「攻撃が特徴的なチーム、例えば僕自身、スペイン代表をよく見ていた時期もありましたが、最近では日本代表の試合に選手たちもイメージしやすい参考になるプレーが多いです。だからこそ日本代表の映像や自分たちの映像を活用しながら、『ここはもっと攻撃の質を高められる』などと、細部のクオリティアップ、意識の向上も図っています」

攻撃面に常に焦点を当てながら、現代サッカーではうまいだけではなかなか勝てないのが現実でもある。確かな技術力をベースとしながら、どんなときもチームのために足を動かす走力、一対一や球際では決して負けない強度、奪われたら即時奪還を目指す切り替えの速さ、そうした要素がすべて高次元で絡むからこそ、人々の心を動かすサッカーを表現できるとも言えるだろう。だからこそ、沖田監督も、昨シーズン同様に技術力とともに、“強度”も改めて選手たちに求めている。

「先ほども話しましたが、攻撃の時間をより増やすために強度をもっと上げていこうという取り組みは去年からしており、対戦相手やシステム関係なく、個人のレベルアップを図るトレーニングをずっと積み上げています。その意味でさまざまな面で基準が上がっていますし、改めて良いキャンプができていると感じています。

ただ、良い積み上げができている一方で、それを安定したものにしていかなくてはいけない。練習試合でも高い基準でできたと思ったら、試合によっては下がってしまうなど、波があるのも課題です。そこは、(昇降格が発生する)夏からの2026/27シーズンに向けても試合を安定させながらより質の高いものにしていかなくてはいけません。

必要なのは、多くのバリエーションを身に着け、それを使いこなせるようになることで、そのためにはベースの止める・蹴るや、クロス、シュートの精度アップをコツコツやっていくしかありません。そこは引き続き要求していきます」

沖田監督の言葉にもあった通り、2026年の半年間は、夏からの秋春制移行へ伴う特別大会「明治安田J2・J3百年構想リーグ」が実施される。ザスパは昨シーズンJ2降格で涙を飲んだ横浜FC、湘南ベルマーレ、J1昇格を目指すベガルタ仙台、モンテディオ山形、昨シーズンはJ3で旋風を巻き越してJ2昇格を果たした栃木シティらと顔を揃えるEAST-Aに振り分けられた。

強敵が多いからこそ燃えるのが、沖田監督の性格でもある。

「J2に所属するクラブが多いグループですが、その意味では力を試し、力を付けるための良いグループだなと感じています。とにかく進化し続ける。その18試合になります。夏からのシーズンで、J3で“上”を歩き続けられるチームになるために。そのためにレベルの高いチームと互角に戦えるように、そして成果、結果、成長した姿を見せられるように頑張りたいです」

さらに勝ち筋をひとつでも多く見出すために、セットプレーの強化にも力を入れているという。

「チームとして得点力をもっと上げたい、失点を大きく減らしたいという目標があるなかで、セットプレーでもっと得点を加えられるように、失点をもっと減らせるように強化をしています。流れのなかでのゴールをもっと増やしつつ、セットプレーでも強みを出せれば攻守でレベルアップできる。だからこそ力を入れています」

前述したように今オフは5年、ザスパで戦った髙橋がJ2いわきに移籍する別れもあった。ザスパで育った選手が、さらなる高みに飛び立つことに喜びを感じつつ、寂しさも覚えるのが正直な気持ちだという。

「そこは本心を言えば、複雑なところでして、選手たち誰もが野心、向上心を持ち、一緒に戦ってきたなかですごく良い関係性を築いていたからこそ、群馬を巣立った選手を応援したい気持ちと、ここで一緒にやりたかった気持ちと、両方あるのが正直なところです。ただ理想的なのは、このクラブで成長した選手をより残していけること。今、特殊なサッカーをしているなかで、戦い方を理解した選手たちに残ってもらうことが、最大の補強になるとも考えています。そう簡単にはいかないことも分かっていますが、その理想も目指したいです。

そのなかで自分自身も成長してチャレンジしていきたい。選手は日々やり続けてくれているので、しっかり道を提示できるように、導けるようにしていきたいです。とにかく上を目指すビジョンに変わりはなく、そのための力をつける。そのための基準アップへ日々、練習をする。そういうクラブになっていきたいです」

つらい別れをしなくても済むように、みんなで上のカテゴリーに行けるように。そのためにも百年構想リーグでさらに力を付け、夏からの新たなリーグ戦で昇格を目指す。

「改めて強度を上げ、守備力を整備しているのは攻撃の時間を増やすため。攻撃のマインドのチームに変わりはありません。攻撃が疎かになることはない。攻撃面をレベルアップするためにすべての基準を上げる。そこですね」

一切ブレはなく、妥協もなく、2年目の“沖田ザスパ”も一直線に進んでいく。夏のシーズンへ向けて、百年構想リーグで躍進し、見る人たちを驚かせる姿にぜひとも期待したい。

文:本田健介

カテゴリ:INTERVIEW