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2025.09.05

【番記者コラム Vol.02】今季3度目の連敗を喫した夏。勝つことでのみ道は切り開く

反撃の口火を切るための夏になるはずだった――。しかし、3週間のサマーブレイクが明けて迎えた8月の3試合は1勝2敗と負け越し。“一歩進んで、二歩下がる”という結果となってしまい、J2昇格プレーオフ圏内の6位・奈良クラブとは14ポイント差、J2自動昇格圏内の2位・栃木シティとは21ポイント差まで開いてしまった。

出だしは非常に良かった。今後の躍進を期待させた。

8月16日のホームでの一戦は、当時2位に付けていたFC大阪に対して、力強い勝利を収める。フィジカルやパワーが特徴の相手に対して、立ち上がりこそ押し込まれたが、中断期間中に重点的に取り組んできたという守備面で全員が粘り強さを見せ、無失点でしのぐと、本来の自分たちのスタイルでボール保持の時間を増やしていく。ボランチの瀬畠義成や左センターバックの高橋勇利也が中心となってテンポよくボールを動かしていき、セカンドボールの局面に移れば、成長著しいボランチの安達秀都が鋭い出足と抜群の読みでことごとく回収。西村恭史と風間宏希の二人もリスクとのバランスを取りながら、中盤での主導権を渡さなかった。

また、得点の奪い方も効率的かつ効果的であった。10分の先制点は、勢いよくゲームに入ってきながらもゴールが遠い状況だった相手の心を折る時間帯でのゴールとなり、自陣でのセットプレーから高橋と河田篤秀のコンビネーションでゴールを陥れる。そして、24分の追加点は沖田ザスパの真骨頂が詰まった形から生まれる。

左のワイドトップに入る田中翔太が長い距離をランニングして、右サイドのポケットを攻略。右ワイドトップの小西宏登からのパスをマイナス方向に折り返し、そのクロスにニアで西村がつぶれ、大外から入ってきた高橋が蹴り込む。ピッチを広く使い、多くの人数が関わって決めたゴールは、この試合の勝利を確信させ、今後の戦いに明るい光を灯した。

5か月ぶりにホームで勝利を飾ったあとの高橋の言葉には、ここからの巻き返しと強い覚悟が宿っていた。

「ここまで連勝するチャンスが何回もあった中でできていないので、『次、次』という声も聞かれますけど、僕たちが見ているのは次だけでなくその先なので、その先を目指して練習しないと次も勝てないと思います。『次、絶対に勝つ』というよりも、この戦いをこの先も続けていきたいので、この先に集中して戦っていきたいと思います」(高橋勇利也)

ところが、今季それまで5度あった、そのチャンスを一度もモノにできなかったチームは、またしても初の連勝のチャンスを逃してしまう。

リーグ再開で2連勝と、これ以上にない最高の形でリスタートするための舞台として用意されたのは、ホームでの北関東ダービー・栃木SC戦。6月のアウェイでのゲームではしぶくと勝ち切ったダービーマッチでの“ダブル”を懸けた試合が、8,500人以上が集まった正田醬油スタジアム群馬で行われた。

果たして、結果は0-1で敗戦。スコアだけを見れば、最少スコアでの決着であり、表面上の内容だけを見れば、ほとんどの時間で押し込むことに成功した。しかし、結果がすべてのゲームにおいて、それは言い訳にしかならない。試合開始早々の9分に先制点を奪われたことで、自ら試合展開をそうさせてしまった印象は否めず、栃木SC側からすれば、無理に前に出ず、しっかりとブロックを敷いてからのカウンターに徹しても問題のないシチュエーションであった。この勝利で今季初の3連勝となった栃木SCの選手が口にした言葉が興味深かった。

「やっぱり、自分たちは昨季降格してしまったチームだから、どこか勝てないこと、負けることに慣れてしまっているところがあったと思うけど、ここにきて段々と一体感が出てきて、ようやく泥臭く勝てるようになってきた感覚があるかな」

試合後、スタジアム中から響いた大きなため息とブーイングも合い交じり、あらためて、“勝つことが正義”だと突き付けられたゲームとなった。

それでも、まだ1勝1敗のタイであり、3試合目の勝敗如何によっていくらでもポジティブな月にできたはずが、8月最後のゲームで、“今季のワーストゲーム”を披露してしまう。2-3。カマタマーレ讃岐とのアウェイゲームを落とした。

この試合もスコアこそ最少点差であるが、その意味合いは栃木SC戦とはまた異なり、自分たちの甘さや緩さを露呈してしまう。開始5分での先制点の献上が象徴するようにゲームの入りでつまずくと、そこからリバウンドメンタリティーを発揮するどころか、トーンダウン。サッカーのベースの部分で下回り、沖田ザスパの生命線であるビルドアップの糸口も見いだせないまま、前半が終了する。後半はまるで別のチームのように蘇り、本来の姿を取り戻し、二度、ゴールネットを揺らしたが、得られた勝点はゼロ。肝心な結果を逃し、今季3度目の連敗を喫した。

残されたシーズンはあと3か月、あと13試合。とにもかくにも、勝つことで道を切り拓いていくしかない。

文:須賀大輔

カテゴリ:番記者コラム