【番記者コラム Vol.01】“もどかしい”想いを胸に目指すべき場所へ

悔しい。もったいない。歯がゆい。じれったい……。
前半戦を振り返ると、どのような言葉が思い浮かぶだろうか。
19試合を終えた時点の成績は、5勝7分け7敗の勝点22。得点は27で失点は30。結果だけで考えれば、“不満足”という言葉が当てはまるだろう。開幕前に掲げた「J3優勝・J2昇格」という目標や、そのための基準として示した「勝点70、22~23勝」という数字から逆算すれば、明らかに足りていない。
ただ、そこに今季から取り組む“超攻撃的サッカー”の内容を組み込んで考えれば、少し見え方は変わってくるだろう。勝点3を得られそうなゲームを勝ち切れなかったり、勝点1はつかめそうなゲームを落としたり、内容に手ごたえを感じるゲームは少なくなかった中で、実際に積み上げた勝点と比べると、どこか腑に落ちないのが本音である。
だからこそ、この言葉に前半戦の戦いぶりは集約される気がする。
「もどかしい」
良くも悪くも、とにかくブレず、真っ直ぐに突き進んできた前半戦だった。沖田優監督を先頭にコーチングスタッフ陣と選手たちが一丸となり、1月のプレシーズンから愚直に“超攻撃的サッカー”に取り組んできた。開幕前からと比較すると、そのプレー精度の向上と戦術の浸透具合は目を見張るものがあり、指揮官は選手たちのパフォーマンスとチャレンジ精神に目を細め、賛辞を惜しまなかった。
「ここまで始動から5週間しか経っていないですけど、今季から掲げるザスパ群馬の攻撃的なサッカーに対して、自分の中では選手たちがものすごく速いスピードで順応してくれている、めちゃくちゃ成長してくれていると感じるので、すごくいい状態でプレシーズンを過ごせたと思います。シーズンが始まって、試合を重ねればもっともっと成長していくと思っています」
GKもビルドアップに組み込み、自陣から丁寧に、かつ正確にボールをつないでゴールを目指していくサッカーはJ3リーグの中では異彩を放ち、日を重ね、試合を経るごとに選手たちの成長を促していった。
しかし、その手ごたえや内容が、きれいにそのまま結果に直結するほどプロの世界は甘くなかった。7年ぶりに戦うJ3リーグで、ザスパ群馬は苦戦を強いられている。
スコアレスドローに終わったが開幕戦のFC琉球戦(0△0)では、支配率でもシュート数でも相手を大きく上回り、続く第2節・栃木シティ戦(2〇0)では初勝利を飾るなど、いいスタートを切ったかに思われた。ところが、第3節・AC長野パルセイロ戦(2●3)、第4節・鹿児島ユナイテッドFC戦(2●5)で連敗。前からプレッシャーを掛け、ボールを奪いに来た相手の圧力に屈する形となり、失点を重ねた。
その後、第5節・ガイナーレ鳥取戦(2〇0)で2勝目を挙げたが、この試合以降は浮き沈みの連続となっていく。第6節から第11節まで6戦勝ちなしの時期を経験したり、上記の鳥取戦を最後にホームゲームでは勝利から遠ざかったりした一方で、開幕当初は苦手としていたアウェイでは、第12節・福島ユナイテッドFC戦(4〇2)、第15節・栃木SC戦(1〇0)、第19節・松本山雅FC戦(3〇1)と好内容で勝利する一面も見せた。
ただ、肝心の順位ではなかなか浮上できないまま、シーズンの半分を消化。一度も連勝を果たせなかったことが大きく響き、中位以下をさまよい続けた。
それでも、今季のチームに迷いは一切ない。沖田監督は常に“継続”を強調し、後半戦もこのまま突き進んでいく覚悟を示している。
「自分たちはスタートから、勝ったときも負けたときも攻撃的なマインドをもって戦い、勝利を目指してきました。もちろん、ここまでの勝点はまったく満足できるものではありませんし、悔しい前半戦としか言えないですけど、続けてきたこと、ブレないで積み上げてきたことは、成果として間違いなくあると思います。選手もその方向性を信じて、その中で成長し続けてくれましたので、後半戦はより結果を出しながら、スタイルを進化させていきたいと思っています」
すでに、その後半戦も3試合を消化。長野、栃木シティ、鹿児島と対戦し、結果は2分け1敗。上を追い掛ける立場で落とせる勝点はもうない中で7ポイントも失っている。特に第21節・栃木シティ戦(1△1)も第22節・鹿児島戦(2●3)も終了間際の失点で、手中に収めかけていた勝点を落とした。厳しい言い方をすれば、前半戦の時点で課題として見られていたゲームの終わらせ方に改善は見られていない。しかし同時に、“あと一歩”のところまで来ている実感があることもまた事実である。
対戦当時、首位だった栃木シティに対しては、ほとんどの時間帯で主導権を握り、前回対戦時に完敗した鹿児島に対してはまたも敗れはしたが、5カ月間の成長を窺わせるシーンを多く見せてくれた。開幕当初と比べ、ビルドアップの精度や質は格段に高まり、得点パターンも増加中。“超攻撃的サッカー”の濃度は確実に濃くなってきている。あとは、試合の流れを読む目を養い、ゲームの終わらせ方を身につけ、そして何より、訪れたチャンスを確実に仕留める決定力を高めていければ、連勝と浮上が期待できるところまで来ている。
3週間のインターバルが明け、ここからはノンストップでリーグ戦は行われる。中断前、最後の試合となった鹿児島戦後に指揮官は約束した。
「攻撃のマインドを大事にしているからこそ、もっともっとミスを減らさないといけないし、プレーの精度を追求し続けていかないといけない」
魅力あるサッカーは、勝ってこそ価値が高まるもの。信念とスタイルを貫いてきたからこそ、前半戦では高い授業料を払い、痛い目に遭ってきたが、それ以上に得たモノもある。残りは16試合、散々味わった“もどかしさ”を歓喜に昇華できれば、自然と目指すべき場所にたどり着けるはずである。
文:須賀大輔
カテゴリ:番記者コラム