J1首位に真っ向勝負。
逃げずに、引かずに、貫けるか

チームとして、良い状態、良いモチベーションでこのゲームを迎えられそうだ。

ザスパ群馬は、7日のリーグ前節で栃木SCと対戦。90分を通して難しいゲーム展開を強いられたが、終盤に決勝点を奪い、アウェイでの“北関東ダービー”を制した。そこから中3日、今度は天皇杯の戦いがやってくる。現在、J1で首位に立つ鹿島アントラーズに真っ向勝負でぶつかっていく。

カテゴリーで言えば2つの差がある。クラブの規模も、チームとしての経験値も、劣るかもしれない。もちろん、チャレンジャーとしての立場で臨むゲームになることは言うまでもない。ただそれでも、胸を借りるだけのゲームにするつもりも、経験を積むためのゲームにするつもりもない。群馬は勝つために初見参の地となる県立カシマサッカースタジアムに乗り込む。

メンバーは良い意味で不透明だ。3月のルヴァンカップ1stラウンド1回戦・長崎戦（1●4）や、5月の天皇杯群馬県予選決勝・上武大戦（6○0）、天皇杯1回戦・法政大戦（1○0）では、直近のリーグ戦から大きくメンバーを入れ替えて戦ったが、“誰が出ても同じサッカーをする”ことを掲げる今季の群馬は、その時期によってリーグ戦に出場するメンバーが変わっており、まさに流動的。また、今回は前後の試合間隔がいずれも中3日であり、会場はどちらも近隣県と移動の負担もそこまで大きくないだけに、沖田優監督が“ベストメンバー”を選択する可能性は十分に考えられる。「誰が出ても自分たちのサッカーをできている意味では、栃木SC戦の勝利や勢いをそのまま鹿島戦にぶつけたい」と指揮官。何より、選手全員がカシマのピッチに立つために目を輝かせている。

どんなメンバー構成になったとしても、沖田ザスパのスタイルは変わらない。鹿島に対して、自分たちの生命線であるビルドアップをどれだけ機能させられるかが大きなポイントになる。J3では味わえない強度やスピード感で奪いに来る相手に対して、逃げずに、引かずに、貫けるか。1回戦で母校の法政大をシャットアウトし、鹿島への挑戦権を手に入れたGK近藤壱成は、示すべき姿勢についてこう強調する。

「相手の圧力に負けて自分たちのやってきたことができないまま負けることが一番イヤです。自分たちのやってきたことを出した上での勝負だと思っているので、苦しい時間が長くなると思いますが、チーム全体として勇気を持つことが大事だと思います」

群馬と鹿島は今回が公式戦初対戦。カシマの地でどんなインパクトと爪痕を残し、勝利をつかみ取ってこれるか。沖田ザスパは、いま持てる自分たちの力のすべてを注ぎ込み、鹿島撃破に挑む。

文：須賀大輔（エル・ゴラッソ群馬担当）

沖田 優監督
Q.リーグ戦の良い流れを天皇杯2回戦・鹿島アントラーズ戦にどうつなげていきたいですか。
「（リーグ前節・）栃木SC戦もそうでしたけど、途中出場の選手がゲームにスッと入って、みんなが同じプレーをできる、それぞれが色やアクセントを加えられていて、いまは誰が出ても自分たちのサッカーをできています。その意味では、栃木SC戦の勝利の内容や勢いをそのまま鹿島戦にぶつけて、“自分たちはこのくらいやれるよ”ということをしっかりと出して挑みたいと思っています」

Q.鹿島の印象はいかがでしょうか。
「鬼木さん（鬼木達監督）になって、いま一度戦えるようになってきたというか、状況によって人数をかけるところ、我慢強く流すところ、その両面を持ち合わせて、僅差でも勝つしぶとさがあるような、昔のタイトルを獲り続けていた鹿島に少し戻りつつあるんじゃないかなという気はしています」

Q.現在、J1で首位を走る鹿島相手にどのようなゲームをしたいですか。
「鹿島はゲームの入りのスイッチのかけ方、勝負どころでのパワーの上げ方など、ゲームを感じ取る個人能力が高い選手がいるチームだと思うので、本当に強い、いま首位にいるのも不思議ではない総合力の高いチームです。ましてや、今回はカシマスタジアムでの試合ですから。でも、それに対して、自分たちのスタイルを真っ向勝負で全部出そうとしたときに通用する部分はたくさんあると思います。自分たちの時間を長くすれば勝てるとも思っています。ただ、主導権を握られて勝負どころでパワーをかけてきた鹿島に対して耐え切れないと、食われてしまうだろうなと。そういうことは想定しながら、鹿島の良い部分が出ないように自分たちがどれだけできるかが大事です。いくら鹿島でも90分間ずっとスイッチを入れて守備をしているわけではないので、ボールを持つ時間は十分に作れると思っています。いつもどおり自分たちのサッカーを出して挑みたいです。あとは、勝負の綾の部分ですよね。どの時間にどっちが決めるかでゲームは動いていくと思うので、先制したいですね」

Q.J3だと体感できない相手やスタジアムでの試合になると思います。選手たちにはどんなことを体感してほしいですか。
「自分たちのサッカーのレベルを上げて、ステージをどんどん上げていこうという目標がある中で、いまJ1で首位にいる力のある鹿島と対峙できることは、自分たちを試すにも挑むにも絶好の機会になると思っています。若い選手からすれば、あのスタジアムが初めての選手もいると思います。でも、勝負事ですから勝ちたいです。上のカテゴリーのチームと対戦できる試合を増やしていきたいです」

FW 23 小野関 虎之介選手
Q.天皇杯2回戦・鹿島アントラーズ戦への思いを教えてください。
「自分たちはチャレンジャーなので、恐れることなく、勝利だけを目指して戦いたいと思います」

Q.県立カシマサッカースタジアムでの試合も初めてですか。
「試合を観に行ったこともないので、本当に初めてですね。プレーするのがすごく楽しみです。昨季、（ルヴァンカップ1stラウンド2回戦で）柏レイソルと対戦しましたけど、それは自分たちのホームだったので、J1のチームのホームで試合をするのは初めてですね」

Q.鹿島の印象はありますか。
「いろいろなチームがありますけど、その中でも鹿島というチームは常勝軍団というか、常に勝利に向かって戦ってくるチームだと思っています。だからこそ、自分たちのサッカーを出すためには絶好の相手だと思うので、すごく楽しみです」

Q.1回戦・法政大戦とは立場が異なり、“挑む側”として鹿島と対峙できます。
「アウェイですけど、カシマスタジアムでやれることはすごくうれしいですし、J1のチームとやれるということは、自分の力を試すには絶好の舞台です。自分の結果とチームの勝利の両方を得られるようにやっていきたいです」

Q.意識することはどんなことでしょうか。
「相手がどうというより、自分がゴールを決めたり、アシストをしたりして、結果を残して勝つイメージを常に持ちながらやっているので、鹿島だろうと結果を残さないといけないです。そのためのイメージを膨らませながらやりたいです」

Q.日本代表歴のある選手たちとマッチアップする可能性もあります。
「あまりそれは気にしないですね。ハジさん（細貝萌社長）とも一緒にプレーしていますし、練習試合ですけど、そういう選手と対戦したこともあるので、相手に代表選手がいようがあまり関係ないなと思っています」

DF 25 中野 力瑠選手
Q.天皇杯2回戦は鹿島アントラーズが相手となります。
「ひと言で言うと、ワクワクが一番大きいですね。J1のトップの中のトップのチームですし、知っている選手しかいないようなチームなので、そういう選手、チームに対してどうやって立ち向かっていくか。本当に楽しみな気持ちしかないですし、自分たちが持っているものを、どれだけ通用させられるかが大事だと思います」

Q.県立カシマサッカースタジアムでプレーできることも大きなモチベーションですか。
「鹿島のホームに乗り込むということは、本当のアウェイだと思います。そこで自分たちがホームでやっているような雰囲気を出せるかが大事だと思うので、選手とファン・サポーターで一体感を出してやっていかないといけないと思います」

Q.出場した場合のイメージはどうですか。
「外国籍選手など経験豊富な選手がいる中でどう守るかは、今後につながるすごく貴重な経験になると思うので、一つひとつのプレーがすごく大事かなと思います」

Q.鈴木優磨選手やレオ・セアラ選手などとマッチアップするかもしれません。
「どの選手が出てきてもすごい選手ばかりですけど、鈴木優磨選手やレオ・セアラ選手が出てきてもビビらずに、自分が持っているものをすべてぶつけて、自分の成長につなげられればと思います」

Q.リーグ前節・栃木SC戦でリーグ戦デビューを果たし、自身としても良い流れにあると思います。
「鹿島戦でも自分の役割を全うして、絶対に勝てるようにプレーしたいと思います」

GK 13 近藤 壱成選手
Q.天皇杯2回戦・鹿島アントラーズ戦に向けて。
「J1のチームと公式戦で対戦できるのは初めての機会なので、すごく楽しみですね」

Q.県立カシマサッカースタジアムでプレーできることも大きなモチベーションですか。
「みんなそこに対するモチベーションはすごくありますし、自分たちが（天皇杯群馬県予選決勝・上武大戦から）2つ勝ってつかみ取った舞台なので、モチベーションは高いです。もう1回勝って、次に進みたい思いは強いですね」

Q.鹿島の印象やイメージはどうですか。
「サッカーの基本である戦う部分や走る部分をチームの文化としてすごく徹底しているイメージはあります。また、監督が今季から代わり、やるサッカーもちょっと変わって、実際に首位にいますし、強いチームだと思います」

Q.J3リーグ戦とはまた違う圧力を受けたり、我慢を強いられる時間があったりするかもしれません。
「プレススピードなど、自分たちが知っている基準以上のものを出されたときに、慌てて自分たちのサッカーをできなくなってしまうのではなくて、ボールを持って相手を動かすことがいまの自分たちのサッカーです。相手の圧力に負けてそれができないまま負けることが一番イヤですし、自分たちのやってきたことを出した上での勝負だと思っています。苦しい時間が長くなると思いますが、（相手のプレスから）逃げてボールを蹴って捨てていたら、相手のやりたいサッカーに近づいてしまうと思うので、チーム全体として勇気を持つことが大事だと思います」

Q.一発勝負で鹿島が相手と考えると、先制点は大きな重みを持つと思います。
「取れるに越したことはないですけど、逆に取られてしまう可能性もあります。ただ、そうなったときにブレてしまったら、鹿島は相手にスキがあるときにもう1点、2点と追加点を狙ってくるチームですから、それは相手の思うツボです。先制点は狙いながらも、先に失点してしまったとしても、いまのチームには点を取れる感覚があるので、試合を通して複数失点をしないことが大事だと思います」

Q.この試合は、1回戦で母校の法政大に勝ったからこそのゲームになります。
「あの試合は、立場で言えばこっちがプロであっちがアマチュアでしたけど、今回は逆で、こっちがJ3であっちがJ1なので、彼ら（法政大）みたいにひたむきに戦うことを、今度は自分たちが意識しないといけないです。カテゴリーが下のチームとやるやりづらさは自分たちも分かっているので、その心理もうまく利用して鹿島を倒したいですね。それに、いまチームは5月から無敗で来ているので、その流れを続けたいです。天皇杯をリーグ戦につなげていくためにも、天皇杯でこの先の景色を見るためにも、勝利したいと思います」